心の手帖


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画家・松下紀久雄が残したかったもの

画家・松下紀久雄の顕彰は順調に進み沢山の作品と文献と生き証人の方々に出合えました。
その結果、この画家は一貫して「心が濡れている」、いわば情に厚い人柄であることがわかりました。
それは作品に表れています。
職業絵図はもちろん、庶民の生活風景などに端的に描かれています。

今日は、そのような作品の中から3点を紹介します。
(作品説明文の一部は「日本むかし絵」から引用しました。)

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「味噌造り」 
江戸時代は上は将軍から下は庶民に及ぶまで食事に味噌汁は欠かせないものとされ、その風習が今に続き、日本人にとって食生活になくてはならないものとなりました。そんな貴重な「味噌造り」を職業絵図として残したのです。
味噌は知っていても製造している現場を知らない多くの人にこの絵図を通して貴重な味噌を再認識して欲しいという願いもこめられています。

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「駄菓子屋」
かつては子供たちの交流の場として最高に楽しい処でありました。
駄菓子という名称は高級菓子に対する下等菓子の意で江戸時代には単価が一文であったので一文菓子と呼ばれていました。駄菓子屋は古く、庶民的裏町に多く小さな店を出し子供たちの憩いの場、教育の場でありました。
戦後、駄菓子屋のほとんどは姿を消し、子供たちにとって天国の場がなくなりました。
松下は子供たちの憩いの場がなくなることにある種の危機感を持っていたのではないかと思います。

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「蔵町の雨」
これは川越の蔵町です。川越の織物は江戸時代から産地として有名でした。城下町の婦女子は、手内職にはげんだといいます。その雨の蔵町に着物姿の女性がとても似合うと松下は言いました。
庶民の町生活をこんな粋な絵図にして表現した松下こそ粋な画家といえるでしょう。


今日は、この3点の紹介のみですが、いやいや他にも魅力的な情の厚い作品が沢山あります。
松下の作品は後世に残す価値があります。
若い人たちが観る事で歴史を学んでどう生きるべきかを考える良き教材です。
どこの美術館や博物館にいってもこのような作品群に出合えません。
絵画は単に綺麗であればいいとか、高名作家のものなら右へならえでいいとか、そういうものであってはならないと信じます。観る側が何かを感じ、何かを学ぶ、そのような視点が見出せる作品に意味があると思うのです。

参考文献:「日本むかし絵」((有)むかし絵会 ・1999年 )



by kokoro-tomnog2005 | 2018-07-12 21:50 | アートな日々 | Comments(1)
Commented by 市民太郎 at 2018-07-17 10:54 x
松下紀久雄氏の絵はむかしの庶民の生活の一コマや、歴史の上の出来事また、その地方の民話に基づいたお話しなどを独特の絵筆のタッチで描き、理屈抜きに楽しく感じられます。また、良くみればそれぞれの登場人物や動物の個性もサラッと描き分けています。おそらく描く前には、この人物は何かの用事で急いで歩き、この猫は腹をすかしているのだろうというように脚本家のような視線でストーリー立てをしているのではないかとさえ思われます。
それは「東京の民話」(現代教養文庫)や「武蔵野むかしむかし」(朝日新聞社編)等々に挿し絵を描かれていますが、文献に従って背景や人物を描くことによってストーリー性のある絵になったともいえるのでは?と勝手に想像しています。
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